そばについて (二)
私たちが普段食べているソバ以外に、日本で利用されているソバ属の植物には「ダッタンソバ」「宿根ソバ」があります。
ダッタンソバは、ネパールを中心としたヒマラヤ諸国の海抜の高い地域で盛んに栽培し、利用されています。日本では「ニガソバ」と呼ばれており、かなり苦味があるので、食用とはされませんでした。
しかし最近では健康食ブームに押されて、日本国内でもいくらか市場に出回るようになってきています。普通のソバに比べ、大量のポリフェノールを含み、粉にすると特徴のある黄色をしています。これはケルセチンという苦味成分によるものです。
宿根ソバの別名「シャクチリソバ」のシャクチリとは、腹痛止めの意味があり漢方薬として利用されました。中国南部を原産とする多年生草本で、ソバの起源種の一つと言われています。
ソバは自分の花粉がめしべに付いても受粉しません。受粉するためには、他の個体の花粉がめしべにつくことが必要になります。自分の花粉で受粉できる自家受粉に対し、これを「他家受粉」といいます。
ソバの花で受粉が行われるためには、昆虫の助けが必要になります。「虫媒花」(ちゅうばいか)であるソバの花は虫を誘うために花からにおいや蜜をだします。皆さんもソバの蜂蜜を食べたことがあるのではないでしょうか。アカシアなどの蜂蜜に比べて味や香りにちょっと癖があります。ソバの花のにおいは、この蜜腺から発せられると考えられており、鶏糞肥料のようなにおいがします。虫を誘うために努力している証ですが、人間にとって必ずしもいいにおいとは言えないようです。
ソバは栽培期間が短くてすむことも大きな特徴です。「救荒作物」として重要な性質でもあります。救荒作物とは飢饉などで食糧不足が起きた時、代用食料として利用される作物です。稲は収穫まで120日から半年近くかかりますが、ソバの場合は75日くらいで収穫出来ます。干ばつなどで稲の不作を認識したのち、7月頃から栽培に取りかかっても収穫期には間に合います。